回遊や渡りなど、生物の旅に関する論文&研究日誌
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VjT van Ginneken and G van den Thillart
Nature 403 156-157 (2000)
ヨーロッパウナギ(Anguilla anguilla)は長い間サルガッソー海で産卵すると考えられている。この十年間、シラスウナギは異常なまでに激減しており、その原因として親ウナギの脂肪蓄積の欠乏が示唆されている。陸水域における若齢魚の餌の減退からくる脂肪蓄積の欠乏は、飢えた親が産卵場にたどり着くのを阻害することが予想される。しかし我々は6000kmもの回遊にかかるコストは実際には極めて低く、60%もの脂肪が生殖腺の発達に回せることが可能であることが分かった。
銀ウナギは9月から11月にヨーロッパを発ち、サルガッソー海へは2月から6月に着くことが予想される。このことから1mの雌の銀ウナギにとって遊泳速度は毎秒約体の半分を進む計算になる。ここから算出される必要エネルギー量はスタート時の全エネルギー量の30%にあたる。回遊する銀ウナギの脂肪蓄積は10から28%程度であることから、先の試算では回遊を実現できないことが示唆される。
そこで我々は1mの銀ウナギのエネルギー消費量を連続的に50cm/secで10日間泳がせ記録した。酸素消費量のデータを脂肪の酸化に変換した。これはウナギにとって唯一しよう可能な燃料である。休息時および遊泳時のエネルギー消費量はそれぞれ、10.11±0.36と23.06±0.41であった。
われわれはこの値を元に、回遊にかかるコストを求めた。脂肪の蓄積は10から28%というレンジを考慮し20%とした。体重2kg体長1mのウナギ(400gの脂肪蓄積)一日43.2km回遊すると仮定すると、サルガッソー海へ着くまで139日かかる。この期間154gの脂肪を使用すると予想され、これは全脂肪の38.5%にあたる。このことから回遊に使われているとされているエネルギー消費量0.329~0.417 cal/g kmは我々の結果よりも2.4倍から3.0倍に高く設定されている計算になる。実際のエネルギー消費量は水温が低いことを考慮するとさらに低いものになることが予想される。我々の試算から、ウナギは回遊を終了した時点でも約60%の脂肪の蓄積が残っており、これを生殖腺の発達にまわすことができる。卵のエネルギー含有量を23.48kj per g dry weightであることに基づき計算すると413gの卵を生産可能である。この量はGSI22にあたり、これはホルモン処理を行ったウナギのGSIの正常な値である。
Nature 403 156-157 (2000)
ヨーロッパウナギ(Anguilla anguilla)は長い間サルガッソー海で産卵すると考えられている。この十年間、シラスウナギは異常なまでに激減しており、その原因として親ウナギの脂肪蓄積の欠乏が示唆されている。陸水域における若齢魚の餌の減退からくる脂肪蓄積の欠乏は、飢えた親が産卵場にたどり着くのを阻害することが予想される。しかし我々は6000kmもの回遊にかかるコストは実際には極めて低く、60%もの脂肪が生殖腺の発達に回せることが可能であることが分かった。
銀ウナギは9月から11月にヨーロッパを発ち、サルガッソー海へは2月から6月に着くことが予想される。このことから1mの雌の銀ウナギにとって遊泳速度は毎秒約体の半分を進む計算になる。ここから算出される必要エネルギー量はスタート時の全エネルギー量の30%にあたる。回遊する銀ウナギの脂肪蓄積は10から28%程度であることから、先の試算では回遊を実現できないことが示唆される。
そこで我々は1mの銀ウナギのエネルギー消費量を連続的に50cm/secで10日間泳がせ記録した。酸素消費量のデータを脂肪の酸化に変換した。これはウナギにとって唯一しよう可能な燃料である。休息時および遊泳時のエネルギー消費量はそれぞれ、10.11±0.36と23.06±0.41であった。
われわれはこの値を元に、回遊にかかるコストを求めた。脂肪の蓄積は10から28%というレンジを考慮し20%とした。体重2kg体長1mのウナギ(400gの脂肪蓄積)一日43.2km回遊すると仮定すると、サルガッソー海へ着くまで139日かかる。この期間154gの脂肪を使用すると予想され、これは全脂肪の38.5%にあたる。このことから回遊に使われているとされているエネルギー消費量0.329~0.417 cal/g kmは我々の結果よりも2.4倍から3.0倍に高く設定されている計算になる。実際のエネルギー消費量は水温が低いことを考慮するとさらに低いものになることが予想される。我々の試算から、ウナギは回遊を終了した時点でも約60%の脂肪の蓄積が残っており、これを生殖腺の発達にまわすことができる。卵のエネルギー含有量を23.48kj per g dry weightであることに基づき計算すると413gの卵を生産可能である。この量はGSI22にあたり、これはホルモン処理を行ったウナギのGSIの正常な値である。
PR
SR Jeng, GR Chen, JY Lai, YS Huang, S Dufour, CF Chang
Aquaculture 209 319-332 (2002)
Abstract
本研究の目的は性ステロイドとSPEを用いてウナギの脳内mGnRH、下垂体LHとGH、GSIの調節機構を明らかにすることである。黄ウナギを養鰻池から集め、2週間間隔で様々な量のE2、T、DHTの投与、また週に一度のSPEの投与を行った。雌のGSIは6週間3回ステロイド投与後でも変化は無く、雄では12週間6回投与でも変化が認められなかった。SPE処理ではGSIは顕著に増大し3、6、9、14週間後のすべてで増加が認められた。E2とSPEでは量依存的に下垂体LHの増加が認められたが下垂体GHには影響が無かった。雄性ホルモン(Tと特にDHT)ではGHの合成阻害が起きた。雄性ホルモンはまたLH合成を刺激したがその影響はE2よりも少なかった。脳および下垂体mGnRHと下垂体LHは成熟したウナギ(GSI>20)において有意に増加していた。下垂体および血漿GHはSPE処理では変化が無かった。養殖した黄ウナギにおいて、mGnRH以外の何らかの因子が下垂体LHのおけるin vivoのE2の影響を仲介していることが示唆された。
Aquaculture 209 319-332 (2002)
Abstract
本研究の目的は性ステロイドとSPEを用いてウナギの脳内mGnRH、下垂体LHとGH、GSIの調節機構を明らかにすることである。黄ウナギを養鰻池から集め、2週間間隔で様々な量のE2、T、DHTの投与、また週に一度のSPEの投与を行った。雌のGSIは6週間3回ステロイド投与後でも変化は無く、雄では12週間6回投与でも変化が認められなかった。SPE処理ではGSIは顕著に増大し3、6、9、14週間後のすべてで増加が認められた。E2とSPEでは量依存的に下垂体LHの増加が認められたが下垂体GHには影響が無かった。雄性ホルモン(Tと特にDHT)ではGHの合成阻害が起きた。雄性ホルモンはまたLH合成を刺激したがその影響はE2よりも少なかった。脳および下垂体mGnRHと下垂体LHは成熟したウナギ(GSI>20)において有意に増加していた。下垂体および血漿GHはSPE処理では変化が無かった。養殖した黄ウナギにおいて、mGnRH以外の何らかの因子が下垂体LHのおけるin vivoのE2の影響を仲介していることが示唆された。
S Dufour, M Montero, N L Belle, M Bassompierre, J A King, R P Millar, R E Peter and Y A Fontaine
Fsih Physiology and Biochemistry 11 1-6 (1993)
Abstract
ヨーロッパウナギの二つのGnRH(mGnRHとcGnRH-Ⅱ)に関して、下垂体と脳各部位における分布と催熟処理(cPE処理)におけるそれらの反応をRIAにより調べた。対照群では、下垂体、嗅球、終脳、間脳、中脳においてmGnRHはcGnRH-Ⅱに比べ高い値を示し、脳の後部(小脳と髄脳)ではそれが逆であった。催熟処理群において、生殖腺が発達した個体は下垂体と脳の前部におけるmGnRHが増加していた。cGnRH-Ⅱでは増加は無く、むしろ減っていた。これらのデータはGTHによるGnRHへの正のフィードバックはmGnRH特異的であることを示している。mGnRHとcGnRH-Ⅱの異なる分布と調節はこの二つがウナギにおいて異なる生理現象持っていることを示唆している。成熟時にmGnRHが増加することはmGnRHが成熟の神経内分泌学的調節において重要な役割を示していることを示唆するものである。
Fsih Physiology and Biochemistry 11 1-6 (1993)
Abstract
ヨーロッパウナギの二つのGnRH(mGnRHとcGnRH-Ⅱ)に関して、下垂体と脳各部位における分布と催熟処理(cPE処理)におけるそれらの反応をRIAにより調べた。対照群では、下垂体、嗅球、終脳、間脳、中脳においてmGnRHはcGnRH-Ⅱに比べ高い値を示し、脳の後部(小脳と髄脳)ではそれが逆であった。催熟処理群において、生殖腺が発達した個体は下垂体と脳の前部におけるmGnRHが増加していた。cGnRH-Ⅱでは増加は無く、むしろ減っていた。これらのデータはGTHによるGnRHへの正のフィードバックはmGnRH特異的であることを示している。mGnRHとcGnRH-Ⅱの異なる分布と調節はこの二つがウナギにおいて異なる生理現象持っていることを示唆している。成熟時にmGnRHが増加することはmGnRHが成熟の神経内分泌学的調節において重要な役割を示していることを示唆するものである。
S Dufour, E Lopez, F Le Menn, N Le Belle, S Baloche, and Y A Fontaine
General and Comparative Endocrinology 70 20-30 (1988)
Abstract
淡水と海水の雌ウナギにおいて、E2によって蓄積されたGTHの放出はGnRH-AとPimozideの双方の影響を受けていた。さらに、GTHの放出に関わらず、下垂体におけるGTHの減少や著しい上昇は認められなかった。このことはGTH合成を刺激していることを示している。内因性のGTHの放出の結果、GSIと組織学的観察から卵巣の発達が促されたことが確認された。同様の結果はGnRH-Aとカテコールアミンの阻害剤(L-α-methyl-DOPA)による処理でも見られた。対照的にGnRH-A、Pimozide、L-α-methyl-DOPAの処理だけでは影響は見られなかった。これらの結果から二重の神経内分泌のメカニズム(GnRH合成の欠如とドーパミンによる阻害効果)が産卵回遊前のウナギの生殖機能がPrepubertal blockageであることと関係していることが示された。
General and Comparative Endocrinology 70 20-30 (1988)
Abstract
淡水と海水の雌ウナギにおいて、E2によって蓄積されたGTHの放出はGnRH-AとPimozideの双方の影響を受けていた。さらに、GTHの放出に関わらず、下垂体におけるGTHの減少や著しい上昇は認められなかった。このことはGTH合成を刺激していることを示している。内因性のGTHの放出の結果、GSIと組織学的観察から卵巣の発達が促されたことが確認された。同様の結果はGnRH-Aとカテコールアミンの阻害剤(L-α-methyl-DOPA)による処理でも見られた。対照的にGnRH-A、Pimozide、L-α-methyl-DOPAの処理だけでは影響は見られなかった。これらの結果から二重の神経内分泌のメカニズム(GnRH合成の欠如とドーパミンによる阻害効果)が産卵回遊前のウナギの生殖機能がPrepubertal blockageであることと関係していることが示された。
YS Han, IC Liao, WN Tzeng and J YL Yu
Journal of Molecular Endocrinology 32 179-194 (2004)
Abstract
本研究の目的は(1)ニホンウナギTSHβの系統学的解析のためcDNA塩基配列とそのゲノム配列を決定し、培養した下垂体におけるTSHβの発現調節を調べることと、(2)卵巣の発達段階、および銀化の進行に伴うTSHβの発現量の動態を調べることである。雌ウナギの成熟は体色と卵径から、juvenile, sub-adult, pre-silver, silverの4段階に分けた。TSHβのゲノム配列は2つのイントロンと3つのエキソンが含まれており、TSHβタンパクは20残基のシグナルペプチドと127残基の成熟ペプチドからなっていた。アミノ酸レベルで相同性を比較すると、ヨーロッパウナギと98.4%、サケ科魚類と60.6-61.3%、コイ科と52-56.7%、チョウザメと48.4%、四肢動物と42.9-45.2%の相同性であった。in vitroの実験において、TSHβmRNAはTRH処理により発現を増加させ、Thyroxine処理により発現が減少した。RT-PCRおよびReal Time PCRの解析から、ウナギは銀化に伴ってTSHβmRNAの発現量が増すことが示された。血中のThyroxine量はTSHβmRNAの発現量と平行して銀化に伴い増加したことは、視床下部-下垂体-甲状腺系(HPT axis)が天然のウナギの銀化過程に影響を及ぼしうるという仮定を支持する物である。
Journal of Molecular Endocrinology 32 179-194 (2004)
Abstract
本研究の目的は(1)ニホンウナギTSHβの系統学的解析のためcDNA塩基配列とそのゲノム配列を決定し、培養した下垂体におけるTSHβの発現調節を調べることと、(2)卵巣の発達段階、および銀化の進行に伴うTSHβの発現量の動態を調べることである。雌ウナギの成熟は体色と卵径から、juvenile, sub-adult, pre-silver, silverの4段階に分けた。TSHβのゲノム配列は2つのイントロンと3つのエキソンが含まれており、TSHβタンパクは20残基のシグナルペプチドと127残基の成熟ペプチドからなっていた。アミノ酸レベルで相同性を比較すると、ヨーロッパウナギと98.4%、サケ科魚類と60.6-61.3%、コイ科と52-56.7%、チョウザメと48.4%、四肢動物と42.9-45.2%の相同性であった。in vitroの実験において、TSHβmRNAはTRH処理により発現を増加させ、Thyroxine処理により発現が減少した。RT-PCRおよびReal Time PCRの解析から、ウナギは銀化に伴ってTSHβmRNAの発現量が増すことが示された。血中のThyroxine量はTSHβmRNAの発現量と平行して銀化に伴い増加したことは、視床下部-下垂体-甲状腺系(HPT axis)が天然のウナギの銀化過程に影響を及ぼしうるという仮定を支持する物である。