回遊や渡りなど、生物の旅に関する論文&研究日誌
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A.Kotake, A.Okamura, Y.Yamada, T.Utoh, T.Arai, M.J.Miller, H.P.Oka and K.Tsukamoto
Marine Ecology Progress Series 293 213-221 (2005)
耳石の解析を投稿論文のMaterials and Methodsで執筆するにあたり参考になるので読んでみた。
Abstract
2000年5月から2002年4月にかけて三河湾で周年に渡り定置網で採集した二本ウナギ554個体を用いて、その回遊履歴と生物学的特性の季節変化を調べた。両年とも最も多く採集された月は11月と12月でそのほとんどは産卵回遊が開始されたGSIが比較的高い(0.4~4.3)雌の銀ウナギで71.2%をしめた。雌176匹、雄23匹の耳石のストロンチウムとカルシウムの濃度をX線マイクロアナライザによって測定した。その結果、その生活史において一度も淡水域へ行ったことのない海ウナギが40%、汽水域もしくは淡水と海水が頻繁に入れ替わる生息域に住んでいる河口ウナギが43%、典型的な降河回遊型の川ウナギが17%であった。川ウナギは産卵回遊時期の秋と初冬にかけてのみ採集されたのに対して、河口ウナギおよび海ウナギは少なくとも数個体は周年を通して採集され、その数は11月と12月に劇的に増加した。各回遊型間でのサイズと齢に違いは無かったが、成長率に関しては雌雄ともにわずかだが淡水域の方が低かった。これらの知見から、川ウナギ、河口ウナギ、海ウナギはともに三河湾から外洋へと同時期に回遊を開始していること、三河湾から産卵回遊へと旅立つウナギはその大部分が三河湾の河口域と汽水域にいたことが分かった。
感想
比較的単純な解析から、結構Discussionを膨らまして書いてあり、少し参考になった。これといってインパクトのある内容ではないが、それでもMEPSにのるという事実は勇気づけられる。
性決定に関しての考察はなかなか読み応えがある。
密度という従来の知見からも解析できるが、単純に浸透圧、つまり塩分濃度の違いも影響しているとも考えられるなあと感じた。
Marine Ecology Progress Series 293 213-221 (2005)
耳石の解析を投稿論文のMaterials and Methodsで執筆するにあたり参考になるので読んでみた。
Abstract
2000年5月から2002年4月にかけて三河湾で周年に渡り定置網で採集した二本ウナギ554個体を用いて、その回遊履歴と生物学的特性の季節変化を調べた。両年とも最も多く採集された月は11月と12月でそのほとんどは産卵回遊が開始されたGSIが比較的高い(0.4~4.3)雌の銀ウナギで71.2%をしめた。雌176匹、雄23匹の耳石のストロンチウムとカルシウムの濃度をX線マイクロアナライザによって測定した。その結果、その生活史において一度も淡水域へ行ったことのない海ウナギが40%、汽水域もしくは淡水と海水が頻繁に入れ替わる生息域に住んでいる河口ウナギが43%、典型的な降河回遊型の川ウナギが17%であった。川ウナギは産卵回遊時期の秋と初冬にかけてのみ採集されたのに対して、河口ウナギおよび海ウナギは少なくとも数個体は周年を通して採集され、その数は11月と12月に劇的に増加した。各回遊型間でのサイズと齢に違いは無かったが、成長率に関しては雌雄ともにわずかだが淡水域の方が低かった。これらの知見から、川ウナギ、河口ウナギ、海ウナギはともに三河湾から外洋へと同時期に回遊を開始していること、三河湾から産卵回遊へと旅立つウナギはその大部分が三河湾の河口域と汽水域にいたことが分かった。
感想
比較的単純な解析から、結構Discussionを膨らまして書いてあり、少し参考になった。これといってインパクトのある内容ではないが、それでもMEPSにのるという事実は勇気づけられる。
性決定に関しての考察はなかなか読み応えがある。
密度という従来の知見からも解析できるが、単純に浸透圧、つまり塩分濃度の違いも影響しているとも考えられるなあと感じた。
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K.Tatsukawa
Eel Biology p293-p298
ウナギ航海からやっと帰ってきた。
降りウナギのシーズンに突入し、論文制作も加わり大変忙しくなりそうだけど、それも幸せなことである。
今回はウナギの資源のレビューを読んだ。
考えてみると資源学の分野はかなり勉強不足な気がする。
個人的にはあまり好きな分野ではないが、社会的には重要なので一応触れておくのは得策だと思う。
今回読んだレビューは事例研究・報告を中心にウナギがいかに減少しているかを書いている。
少し古いデータだけど、
ウナギの消費量: 106000t このうち81.5%が海外からの輸入
日本における養殖ウナギの減少: 1991年・38855t → 1999年・22836t
シラスウナギの漁獲量の減少
1960年代 130t、 2000年 17t 盛時の13%
ウナギの漁獲量の減少
1960年代 3000t、 2000年 700t 減少率77%
浜名湖におけるウナギの漁獲量の減少
1960年代 53.2t、1990年代 8.2t 30年間で85%も減少
このほかの河川・湖沼でもウナギの資源は減退
上記のように日本におけるウナギの資源は減少傾向にある。
その原因として、
・海洋環境の変化
・ウナギ/シラスウナギの乱獲
・ウナギの生活環境の破壊(たとえばダム建設)
東アジア全体でもウナギ資源は減退しており、早急な資源管理対策が必要である。
感想
漁師や卸業者の人と話す機会が結構あり、そのたびに減っていると聞いていた。データとしてもはっきりとその傾向が出ていて、やはり何らかの対策が必要であると思う。僕の見解としては、まず河川をウナギが生息できるようにする(carrying capacityの増加)、そして再生産に関わる親ウナギ(銀ウナギ)の漁獲を減らすことが重要なのではと思う。
Eel Biology p293-p298
ウナギ航海からやっと帰ってきた。
降りウナギのシーズンに突入し、論文制作も加わり大変忙しくなりそうだけど、それも幸せなことである。
今回はウナギの資源のレビューを読んだ。
考えてみると資源学の分野はかなり勉強不足な気がする。
個人的にはあまり好きな分野ではないが、社会的には重要なので一応触れておくのは得策だと思う。
今回読んだレビューは事例研究・報告を中心にウナギがいかに減少しているかを書いている。
少し古いデータだけど、
ウナギの消費量: 106000t このうち81.5%が海外からの輸入
日本における養殖ウナギの減少: 1991年・38855t → 1999年・22836t
シラスウナギの漁獲量の減少
1960年代 130t、 2000年 17t 盛時の13%
ウナギの漁獲量の減少
1960年代 3000t、 2000年 700t 減少率77%
浜名湖におけるウナギの漁獲量の減少
1960年代 53.2t、1990年代 8.2t 30年間で85%も減少
このほかの河川・湖沼でもウナギの資源は減退
上記のように日本におけるウナギの資源は減少傾向にある。
その原因として、
・海洋環境の変化
・ウナギ/シラスウナギの乱獲
・ウナギの生活環境の破壊(たとえばダム建設)
東アジア全体でもウナギ資源は減退しており、早急な資源管理対策が必要である。
感想
漁師や卸業者の人と話す機会が結構あり、そのたびに減っていると聞いていた。データとしてもはっきりとその傾向が出ていて、やはり何らかの対策が必要であると思う。僕の見解としては、まず河川をウナギが生息できるようにする(carrying capacityの増加)、そして再生産に関わる親ウナギ(銀ウナギ)の漁獲を減らすことが重要なのではと思う。
Alex Haro
Eel Biology p215-p222
ウナギの降河回遊生態のレビュー。
三河湾の定置網のウナギの漁獲データで論文作成をするにあたり参考になりそうなので読んでみました。
・降河回遊期間の特徴 ;水温↓ 流量↑
・回遊における性的二型
雄; サイズ小・若齢 → Time-minimizing strategy
雌; サイズ大・高齢 → maximize size and migrate at optimal body size
・夜間に行われる
・月周期がある
・降河回遊は発達レベルと行動レベルに分けられる
発達レベル 生活史と関連、サイズ、齢、成長など
行動レベル 環境要因と関連、温度、光、水流
・降河回遊は汽水域や海に達すると止まり、潮汐輸送による影響を受けてい可能性がある
・漁獲データから、降河回遊は主に降雨とそれによる流量の増加と関連がある
→ 障害物や捕食者の回避が可能となるからか?
感想
基本となるのは、降雨と流量。この二つのパラメータをしっかりおさえることから始まる気がする。そして、さらなる解析、特に風の影響、温度との関連、低気圧なども念頭において、論文用の解析を行うことが肝要であると感じた。
Eel Biology p215-p222
ウナギの降河回遊生態のレビュー。
三河湾の定置網のウナギの漁獲データで論文作成をするにあたり参考になりそうなので読んでみました。
・降河回遊期間の特徴 ;水温↓ 流量↑
・回遊における性的二型
雄; サイズ小・若齢 → Time-minimizing strategy
雌; サイズ大・高齢 → maximize size and migrate at optimal body size
・夜間に行われる
・月周期がある
・降河回遊は発達レベルと行動レベルに分けられる
発達レベル 生活史と関連、サイズ、齢、成長など
行動レベル 環境要因と関連、温度、光、水流
・降河回遊は汽水域や海に達すると止まり、潮汐輸送による影響を受けてい可能性がある
・漁獲データから、降河回遊は主に降雨とそれによる流量の増加と関連がある
→ 障害物や捕食者の回避が可能となるからか?
感想
基本となるのは、降雨と流量。この二つのパラメータをしっかりおさえることから始まる気がする。そして、さらなる解析、特に風の影響、温度との関連、低気圧なども念頭において、論文用の解析を行うことが肝要であると感じた。
Shou-Zeng Dou & Katsumi Tsukamoto
Enviromental Biology of Fishes 67 389-395 (2003)
行動を扱っている論文。
行動実験の参考にしようと思います。
温帯のウナギであるAnguilla japonicaのシラスウナギは、実験環境下において、明らかな夜行性の活動リズムを示した。明暗サイクルは負の走光性の行動や夜行性の活動、摂餌行動に影響を与える決定要因であった。自然光の環境下において、シラスウナギは昼間はわずかに摂餌にでる以外はシェルターの中にいたままであるが、夜間は食料をあさりに出てきた。シラスウナギは暗条件下にいうて移動、餌探しを行い、飽食により徐々に活動が低下した。光がくるとシラスウナギはすぐに砂に穴を掘るか、チューブへ入った。継続的な明条件下では、シラスウナギはしばしばシェルターからでて餌を探すが、シェルターの外での移動時間は少ない(例えば、遊泳や砂の上を這う行動)。シラスウナギは光を避けるために利用するシェルターとして、砂よりもパイプを好んだ。これはパイプの方が砂より簡単に避難できるからである。シラスウナギの摂餌や運動活動は夜行性でありよく同調していた。シラスウナギは暗闇において獲物を探し、捕獲するのに視覚よりむしろ嗅覚にたよっているように見える。恒常的な明環境下において、餌はシラスウナギを砂の中から外へ出す要因であった。しかし、暗環境下において、シラスウナギのなかには飽食状態であっても遊泳や砂の上を這う行動をしめすものもいた。汽水域の中では確認されている新月周期に関しては今回の実験条件においては認められなかった。
この論文のやっていることは極めて単純である。
・シラスウナギを飼育(5種類の実験環境)
・行動を観察、行動の指標としてBurying rateを設定。
*Burying rate ;
全個体にしめるシェルター内にいる個体の割合
・以上のデータを解析
今回の実験でも、これと同じようにほぼ同等の単純さで実験に臨もうと思う。
Enviromental Biology of Fishes 67 389-395 (2003)
行動を扱っている論文。
行動実験の参考にしようと思います。
温帯のウナギであるAnguilla japonicaのシラスウナギは、実験環境下において、明らかな夜行性の活動リズムを示した。明暗サイクルは負の走光性の行動や夜行性の活動、摂餌行動に影響を与える決定要因であった。自然光の環境下において、シラスウナギは昼間はわずかに摂餌にでる以外はシェルターの中にいたままであるが、夜間は食料をあさりに出てきた。シラスウナギは暗条件下にいうて移動、餌探しを行い、飽食により徐々に活動が低下した。光がくるとシラスウナギはすぐに砂に穴を掘るか、チューブへ入った。継続的な明条件下では、シラスウナギはしばしばシェルターからでて餌を探すが、シェルターの外での移動時間は少ない(例えば、遊泳や砂の上を這う行動)。シラスウナギは光を避けるために利用するシェルターとして、砂よりもパイプを好んだ。これはパイプの方が砂より簡単に避難できるからである。シラスウナギの摂餌や運動活動は夜行性でありよく同調していた。シラスウナギは暗闇において獲物を探し、捕獲するのに視覚よりむしろ嗅覚にたよっているように見える。恒常的な明環境下において、餌はシラスウナギを砂の中から外へ出す要因であった。しかし、暗環境下において、シラスウナギのなかには飽食状態であっても遊泳や砂の上を這う行動をしめすものもいた。汽水域の中では確認されている新月周期に関しては今回の実験条件においては認められなかった。
この論文のやっていることは極めて単純である。
・シラスウナギを飼育(5種類の実験環境)
・行動を観察、行動の指標としてBurying rateを設定。
*Burying rate ;
全個体にしめるシェルター内にいる個体の割合
・以上のデータを解析
今回の実験でも、これと同じようにほぼ同等の単純さで実験に臨もうと思う。
Vincent Van Ginneken, Caroline Durif, S.Paul Balm, Ron Boot, Martina W.A. Verstegen, Erik Antonissen, Guido Van Den Thillart
Animal Biology 57 63-77 (2007)
久々に更新します。全く論文を読んでいなかった訳ではないけど、最近は実験づいてました。
今日は、現在行っているウナギの研究の参考になる論文です。
Abstract
黄ウナギから銀ウナギへの移行は‘銀化’と呼ばれ、回遊に先駆けて起こる。我々は、黄ウナギの定着期が春であり、銀ウナギの回遊期は秋であり、8月がそれをまたぐ月であることを確認した。主成分分析(PCA)を行い、ヨーロッパウナギ(Anguilla anguilla L.)における銀化に伴う形態的・生理学的変化を特徴づけた。銀化と眼径サイズのような外部形態、GSIやビテロジェニン(VIT)のような内部形質、リン脂質、FFA、コレステロールのような血液成分とが正の相関を示した。肝指数は銀ウナギと黄ウナギで大差は無かった。一方、体組織(脂肪、タンパク質、乾物)のパラメータは銀ウナギと黄ウナギで大きな差が見られた。さらに、銀化過程に伴い秋にコルチゾルが上昇した。コルチゾルは回遊や成熟のために体にためたエネルギーを代謝させる働きがある。生理的、形態的、内分泌学的パラメータを用いたPCAにより、銀化の進行過程において、過渡期があることが認められ、4月から7月は黄ウナギで定着期であり、8月は過渡期、そして9月から11月は銀ウナギで回遊期であると結論づけた。
感想
たくさんのパラメータを用いて、実験をしている。書いていることは目新しくはない。僕の研究と近く、PCAは使える気がした。僕の論文をさらに生かすためには、PCAとともに、Otolith Microchemistryで回遊履歴を調べ、それらをあわせて考察すると良くなると感じた。
Animal Biology 57 63-77 (2007)
久々に更新します。全く論文を読んでいなかった訳ではないけど、最近は実験づいてました。
今日は、現在行っているウナギの研究の参考になる論文です。
Abstract
黄ウナギから銀ウナギへの移行は‘銀化’と呼ばれ、回遊に先駆けて起こる。我々は、黄ウナギの定着期が春であり、銀ウナギの回遊期は秋であり、8月がそれをまたぐ月であることを確認した。主成分分析(PCA)を行い、ヨーロッパウナギ(Anguilla anguilla L.)における銀化に伴う形態的・生理学的変化を特徴づけた。銀化と眼径サイズのような外部形態、GSIやビテロジェニン(VIT)のような内部形質、リン脂質、FFA、コレステロールのような血液成分とが正の相関を示した。肝指数は銀ウナギと黄ウナギで大差は無かった。一方、体組織(脂肪、タンパク質、乾物)のパラメータは銀ウナギと黄ウナギで大きな差が見られた。さらに、銀化過程に伴い秋にコルチゾルが上昇した。コルチゾルは回遊や成熟のために体にためたエネルギーを代謝させる働きがある。生理的、形態的、内分泌学的パラメータを用いたPCAにより、銀化の進行過程において、過渡期があることが認められ、4月から7月は黄ウナギで定着期であり、8月は過渡期、そして9月から11月は銀ウナギで回遊期であると結論づけた。
感想
たくさんのパラメータを用いて、実験をしている。書いていることは目新しくはない。僕の研究と近く、PCAは使える気がした。僕の論文をさらに生かすためには、PCAとともに、Otolith Microchemistryで回遊履歴を調べ、それらをあわせて考察すると良くなると感じた。